豊田先生のこと

この夏、豊田光政先生が亡くなりました。

先生に直接師事したのは1年間だけでしたが、同じ関東圏で活動しているということで、昔から気にしていただいていました。

その昔、一度だけ先生に指導いただく機会がありました。支部の研究会に講師としてお越しいただいたのです。錦木と小菊の生花を勉強しました。手直しをいただく際、席に着くなり開口一番「鋏が汚いね」と仰いました。花についての助言も今でも覚えていてとても役に立っていますが、それ以上にこのことが印象に残っています。いけばなに向き合う姿勢を教えていただきました。

その後、直接指導を受ける機会はなかったのですが、花展の度に声をかけていただいたりと、何かと気にかけてくださいました。

2015年に先生がむさし支部の記念花展で大作の砂物を立てるということがありました。その際に、僕にも手伝いに来ないかと誘っていただきました。僕からすると雲の上の存在である先生から声をかけていただいたのはとても嬉しかったですし、鍛えてやろうという気持ちを意気に感じたものです。はっきり言って足手纏いだったと思いますが、先生は夜のお酒の席でもニコニコして、色々と教えてくださいました(助手に入っていた先輩からはこっぴどく怒られましたが)。

そのときの砂物の写真はこちら

昨年度から先生が生花研究室を開設されることになり、一期生としてお世話になりました。結果的に1年だけになってしまいましたが、様々なことを学びました。達人の技を見せていただきました。しっかりと脳裏に焼き付けたそれらを、これから自分のものにできるように鍛錬します。

もっともっと先生のもとで学びたかったし、もっと色々なことをお話ししたかったです。本当に寂しい。先生から教えていただいたことを伝えることがせめてもの供養になるのかなと感じています。先生が真剣に向き合った池坊の花を次につなげるように精進します。本当にありがとうございました。ゆっくりと休んでください。

先生のお墓の前で