アメリカにもいけばなが好きな方がいます。僕は今アメリカ各地を回って、そういう方々へ向けて講習を行なっています。今日はボルチモアで講習でした。この作品はその際にデモンストレーションでいけた花です。
アメリカの方がなぜいけばなを始めるのか興味がありませんか。機会があるごとに聞くようにしていて、今日聞いたのはこんな話です。
彼女の父親は養鶏を営んでいました。養鶏ではひなのうちに雌雄を選別する必要があり、その専門家がいるそうです。ひよこ鑑定士というやつですね。非常に難しく専門的な仕事らしく、毎年日本からひよこ鑑定士を招いていたそうです。その日本人がいつもカレンダーを持ってきてくれました。そのカレンダーはいけばなの写真が載っているものだったのです。それを見て、彼女は幼い頃からいけばなに興味を持ち、いつか絶対にやってみたいと思っていたそうです。
吹けば切れてしまう細い細い糸のような、なんとも頼りない偶然によって一人のアメリカ人がいけばなに出会ったのですね。そういった小さな縁が一つ一つ積み重なってアメリカにも日本のいけばなが根付いています。いけばな人として嬉しいことです。
それぞれがいけばなに出会うきっかけは様々です。一人一人に物語があります。