松は日本人にとって聖なる木であり非常になじみの深い植物です。
いけばなにおいても松は華道三木の一つに数えられ、大切に扱われてきました。古典の作品の多くには松が使われています。近年は昔ほど松を使うことは減りましたが、それでも池坊いけばなを究めたいと志す者にとっては松は憧れの花材であり、なんとしてもものにしたいものの一つです。
いけばなの世界には「花は足でいけよ」という教えがあります。現代では花材の調達はほとんどが花屋さん任せで、自分で山に分け入って花材を採取するということはほとんどなくなりました。しかし、植物の自然の状態を知ることはやはり大切なことだと思います。
池坊の聖典である『専応口伝』の序文にこうあります。
この一流は野山水辺自ずからなる姿を居上にあらはし花葉を飾りよろしき面影をももとし一同世に広まりて今に都鄙のもてあそびとなれるなり
植物の自ずからなる姿、自然の姿を基調とするのが池坊のいけばななのです。
また分野は違いますが、かの俳聖芭蕉の教えとしてこのような言葉も伝わっています。
松のことは松に習へ
そんなわけで、松を見に、日本三大松原の一つに数えられる三保の松原へ行ってきました。
ぶらぶらと松林を歩きながら、写真を撮ったりスケッチをしたり昼寝をしたり、のんびりと松に浸ってきました。これが直接的に何かの役に立つのかはわかりませんが、これから沢山松を稽古する中で、いつか実を結ぶといいなと思います。