完璧

※以前に別のブログで書いたものを記録用に写したものです。仮名遣ひが異なりますので慣れない方は若干読み辛いかも知れませんがご容赦下さい。

趙恵文王嘗得楚和氏璧。秦昭王請以十五城易之。欲不与畏秦強、欲与恐見欺。藺相如願奉璧往。城不入則臣請完璧而帰。既至。秦王無意償城。相如乃紿取璧。怒髪指冠、卻立柱下曰、「臣頭与璧倶砕。」遣従者懐璧間行先帰、身待命於秦。秦昭王賢而帰之。

【大意】

趙の王が持つてゐた璧を秦(当時の強国)の王が欲しがり、十五の城と交換しないかと持ちかけた。趙の王は断れば攻められるし、与へても城は貰へないだらうと恐れたが、藺相が璧を持つて行くと志願し、もし城が得られなければ璧を守つてみせると言った。秦王には城をやるつもりは無く、それを悟った藺相は怒って柱に歩み寄り「私の頭と璧を倶に叩きつけ粉々にしよう」と言つた。秦王はあまりの剣幕にこれを許し、璧は無事持ち帰られた。

【覚へ書き】

この「完璧而帰」といふところから完璧といふ言葉が生まれたそうです。完は「全うする、欠け目無く守り通す」といふ意です。璧は平らな輪の形をした玉で中央に穴が空いてゐるもので、今で言う宝石のやうなものです。

皆さんは「完璧」といふ字を完璧に書けるでせうか。恥ずかしながら、私は今日まで「完壁」だとばかり思ひ込んでゐました。この話を最初に読んだ時も、先入観から「璧」が「壁」に見へ、壁を欲しがるとは何事かと訳が分からなかつたのですが、語注や訳を読んでようやく納得しました。思ひ込みとは恐ろしいものですね。