六本木歌舞伎『座頭市』

いやあ楽しかった。素晴らしい娯楽です。

台詞が口語だったり、テンポが速かったりということがあって古典的な歌舞伎よりも随分見やすいです。現代の歌舞伎っていうより、現代劇に歌舞伎の富を上手く取り入れたような感じを受けましたが、まあそんなのはどうでもいいですね。楽しめたのが一番です。退屈を微塵も感じませんでした。

そして、海老蔵さんってやっぱり華のある役者です。出てくるだけで舞台がぐっと締まり、惹きつけられます。僕はずっとそんなに好きではないけれども、見るたびにやっぱり華があるなあという感想を抱いていて、今回は結構好きかもと思いました。なんでかは分からないのですけどね。声が落ち着いてきたのかな。昔はもっと甲高い声で喋っていましたね。今回の役柄がそうさせたのかもしれませんが。

奮発して一等席に座ったのが大正解でした。客席での芝居が多くあります。海老蔵さんも寺島しのぶさんも目と鼻の先で見ることができました。運がいい人は海老蔵さんと劇中で掛け合いができます。これから行かれる方はぜひ一等席をお勧めしますよ。幕間には役者さんが客席に出て来てくれて写真を撮ることもできます。

故勘三郎さんの現代作家と組んだ新作なんかでも感じますが、新作歌舞伎はやっぱり今の人の感覚に合わせて随分とテンポを速くしています。現代人である僕が見るとやっぱりそっちの方が見やすいのです。けれども古典への憧れがあって、時々は見たくなるのですよね。ただ、見に行くとやっぱり展開がゆっくりすぎて退屈してしまうこともあります。昔の人はその速さがちょうど良かったのでしょうかね。それがいつも不思議です。昔の人と同じ感覚を持つのはまず無理なのですが、興味があります。

僕自身もいけばなという昔からあるものをやっていて、400年前ぐらいの絵図を元に花を立てます。その時の人が見ていたものと同じものは見えないのですが、一体この人の頭の中はどうなっていたのかしらんと驚かされることが多いです。答えは出ないのですがずっと気になっていることです。